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Sew イベント

サイズの晩餐

レポート

サイズが変わればコミュニケーションが変わる

「テレビが家庭にやってきた頃、みんなで小さな画面に見入り、チャンネル争いをしていました。それがだんだん大画面化してかぶりつくからゆったり眺めるにかわり、個室ごとにテレビが置かれるようになると一人で観るようになる。密なコミュニケーションを目的とするのなら昔の小さなテレビのほうが良かったのかも知れませんね。」

渡邊さんがワークショップのインストラクションで紹介したサイズにまつわる話はどれも興味深く、頷かされるものでした。私たちの行動はある意味、接するモノのサイズによって規定されている。だとしたらサイズを変えることによって今までに無い行動を生み出すことができるのではないかと渡邊さんは問いかけます。

『サイズの晩餐』という駄洒落のようなタイトルが決まったミーティングで話し合われたのは、私たちが日常の中で与えられたサイズの中で生きていないかということでした。実はサイズは自分が選び、設定することができるし、より良い体験を生み出すためには自ら操作するのが良いのは間違いありません。じゃあ、もっとサイズに対して敏感になるには、主体的に考えるようになるには、参加者にその気づきを与えるワークショップを作ろうということで打ち合わせは盛り上がりました。


「婚活の食卓をつくる」

「ある特定の目的をもたせれば食卓も変化するんじゃないですかね。例えば婚活とか。自分のことを伝えるため、人にふるまうためという目的が加われば食器や箸なんかも変わるような気がするなぁ。」

渡邊さんは会議の途中で時々突飛な提案をはさみます。何か議論が壁にぶつかると「うーん、うーん」とうなってしばらく沈黙し、ポソッとつぶやくのです。最初「え?」と思うのですが渡邊さんは真剣です。「そうですよね。うん、きっとそうだ。」とメモを取りながら考えをまとめていきます。その姿は研究者とデザイナーとプランナーが合わさったといえばいいのでしょうか。

「婚活の食卓」というと誤解されてしまいそうですが、確かに私たちがレストランに行って使う食器や箸、スプーンは誰にも均一にセットされていますし、個人で使うことを前提として作られています。それをあるシチュエーションを挿入することで変えてしまおうというのです。目的によってサイズが異なることを実測を介して理解してもらう。こうやってサイズの持つ可能性や意味を知り、自らサイズを設定、操作できるようになるという企画の幹が次第に出来上がってきました。


僕たちはスプーンすらまともに作れない

実際に渡邊さんとこのイベントの企画を始めたのは7月。実施まで5ヶ月もの日々があったはずですが、試作実験は本番の2日前まで行われていました。食器なんてアナログだし、形も単純。いざとなれば紙一枚で作れるから大丈夫なんて最初は気軽に考えていました。でも、口に入れても大丈夫、濡れても大丈夫、専門的な技術の有無を問わない、曲面を作るといった様々な要件が加わってくるとその困難さに呆然とします。

「僕たちは何でも買える時代に生きているのに、いざ自分で作ろうとするとスプーン一本すらまともに作れないのか・・・」渡邊さんがつぶやきます。

さて、ここからは実際に採用した作り方です。スプーンは柄と杯の部分を分離することにしました。柄の部分にはレーザカッターで5ミリ間隔の溝を入れます。この加工により好きな長さのところでポキッと手軽に折れるようにしたのです。杯の部分は小学生の時に誰もが経験したプラ板工作です。まず紙に作りたいスプーンの平面図を書きます。それをコピー機で2倍に引き伸ばしてプラ板を上からのせトレスします。それを切り抜いてトースターで1分。熱いうちに既存のスプーンの上にのせて曲面に加工します。冷めたら柄と杯を合体させて完成です。

箸は5ミリ角、長さ900ミリの木材を一人ひとりに配り適当な長さに切ってもらうことにしました。この条件だと最大で450ミリの長さの箸ができます。

コップは既製品の紙コップを大小4種類用意し、その中から自分のサイズに一番近いものを最初に選んでもらいます。さらにサイズを変化させたい場合にはコップを切って調整することにしました。

一番苦労したのは以外にも皿でした。食べ物を載せても持ちこたえなければいけない、エッジをどう作るのか、シェアする可能性が一番高いので衛生面にも細心の注意が必要です。結果として3ミリ厚のスチレンボードを自由な形にカットしてもらい、それをテーブルに配置、ラップで全体を上から覆うという力技になりました。


自由すぎるテーブルセット

さて、渡邊さんからのインストラクションも終わり実作に移ります。グループに別れ、まずどんな食卓にするかテーマ決めを行います。「誰をもてなすのか」という設定とともにこの日参加者を悩ませたのはSewカウンターにならんだ色とりどりの料理。実はSewの常連である自由が丘ブランの後藤さんにお願いして少人数のイベントとしては異例の種類の料理を集めてもらったのです。

最初は自己紹介から始まり、ゆっくりスタートしたグループワークも次第に熱を帯びてきました。各チームで設定したコンセプトに合わせて距離や大きさ、数を考えていきます。スプーンの加工では久しぶりのプラ板工作に「うわっ、思った以上に早く固まる!」とか「思い通りに曲がらない!」といった感想が・・・。

そして各々おもてなし用のテーブルに出来上がった食器やスプーン、箸を配置していきます。「これは・・・」渡邊さんがうなります。各テーブルを回ってみるとまったく想像もしなかった自由な皿やスプーン、箸が並んでいます。使いやすさやかっこ良さではなく、限定されたシーンを与えたとたんこんなに変化するものなのでしょうか。


相手を意識するサイズ

「これは1人でクリスマスを迎えているのに4人でパーティーをしている風に装うためのテーブルです」「これは小学生が合コンする時のテーブルです」次々と発表されるコンセプトはどれも奇抜なもの。それに合わせてデザインされたテーブルセットも盛り付けも奇抜なものでした。でも、それぞれの食器や箸、スプーンにはその形になった理由がしっかりとあり、様々なシチュエーションに合わせようとしたときに食器なども形を変えるということがわかりました。多く聞かれたのは「相手にとってあげるとしたら」や「コミュニケーションを促すためには」といった工夫です。普段は余空間となってしまうテーブルの端に料理を盛り付けることによってお互いの距離を確認したり、自分用の箸と相手にとってあげるための箸で長さを変えたりと今まで見たことも使ったことが無いテーブルセットが現れました。


実際に量ってみる、食べてみる

さて、ワークショップが終了したら自分達で作ったテーブルで実際に食事をしてみます。そしてその傍らで皿やスプーンのサイズを測り、自分達のサイズを確認します。プリンを掬って重さを量ったり、箸で御飯をつまんでみたり。皿も長辺と短辺を量って配られたスペック表を埋めていきます。

最初は作ったテーブルセットで食べる楽しさや驚きに歓声が上がっていましたが、次第に「使いにくいね」「いつもの箸の方がいいね」という感想が漏れてきました。「コンセプトに走りすぎて使いやすさとかサイズの調整というところに関心が行かなかったかなぁ。」と渡邊さん。「使い捨ての割り箸やプラスティックのスプーンでさえ経験の積み重ねからデザインされていて使いやすいんですよ。でも、反対に自分たちの考えたモノが使いにくいのはなぜなのかって疑問をもつのも大事です。そこにサイズの意味があるわけで。」と参加者に語りかけます。

互いのテーブルを行き来してサイズを確認しあう参加者。その後は渡邊さんが今まで研究してこられた「Smoon」、「LengthPrinter」を実際に動かしてのサイズの話リターンズが行われました。ただスライドを観るだけでなく目の前で動くスプーンや床に貼られたテープをみて「おぉー」と反応が起こります。

食が絡むイベントということで、料理や盛り付けに話題が寄る傾向はみられましたが、与えられたサイズに疑問を持つところから始まり、自分達でサイズを設定し、それに合わせてモノを作って使ってみる。さらにその使いやすさや使いにくさからデザインやサイズの意味を考えるという流れは参加者の皆さん体験できたのではないでしょうか。

実はこのイベント、渡邊さんにとって初めてワークショップ講師をつとめた記念すべき会だったそうです。終了後、「いやー、いっぱいいっぱいでした」と話す渡邊さん。でもスタッフとして参加してみて、ものづくりワークショップが持つ独特の難しさ、そしてテーマの浸透度を考えるととても初めてだとは思えませんでした。

すかさず「今度また新たなワークショップをお願いできませんか」と予約を入れましたので、今回参加できなかった方でものづくりやコミュニケーションに興味のある方はご期待ください!

開催日時2012年12月12日(水) 19:00~21:00
会    場フューチャーワークスタジオ ”Sew”
開催場所東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニガーデンコート10F
定    員16名
参 加 費1000円(ワークショップ材料費、飲みもの、軽食代として)
主 催 者渡邊恵太/Sew運営委員会
概要 あらゆるものにあるサイズ。
サイズで生活が変わる。
サイズを変えれば人付き合いだって変わる。

モノゴトがパソコンの画面上で扱われることが多くなり少し鈍くなったサイズ感覚、
サイズの価値を体感する
サイズを巡る晩餐会。

コミュニケーションを目的とした簡単なテーブルセットをつくり、
それを使って軽食しながら、サイズの意味や価値について考えるワークショップです。


*ワークショップでは食器・カトラリーにまつわるサイズの話を聞いた後、コミュニケーションを目的とした皿、箸、コップ、スプーンなどを設計し、作ります。ものづくりが好きな方、パーティーが好きな方、コミュニケーションと食に興味がある方などいろいろな方のご参加をお待ちしております。
詳細説明 1830 開場
1900 開始 インストラクション
1915 ワークショップスタート
2030 まとめ
2100 制作物を使ってパーティー

渡邊恵太さん

博士(政策・メディア)インタラクションの研究者。

1981年生まれ。知覚や身体性を活かしたメディアデザインや次世代家電のインタラクション手法の研究に従事。2009年慶應義塾大学 政策メディア研究科博士課程修了。2010よりJST ERATO五十嵐デザインインタフェースプロジェクト研究員。東京藝術大学非常講師兼任。

2013年4月より明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 専任講師予定。

http://www.persistent.org/

注意事項

実際に紙等を切る・貼るなどの軽作業を行います。
試行は十分行っておりますが、万が一ケガをされた場合は参加者の皆様の自己責任ということでご了承をお願いします。

また、終了後に制作したテーブルセットを用いてのパーティーを準備しております。振るってご参加ください。

参加方法 本イベントは終了しました。

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