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Sew イベント 「こたえて」「つたえて」「ひきだす」ための120分

「いいね!」を生み出す技術

レポート

■市民に開かれた双方向のコミュニケーション

科学に興味のある方だけでなく、コミュニケーション技術にも関心をもたれた方が多数参加された今回のイベント、講師紹介に続いて大崎さんが「科学と社会をつなげるコミュニケーション」と題したミニ・レクチャをしてくださいました。

「18世紀くらいまで科学は極限られた貴族の嗜みでしかなかったんです。それが産業革命によって発明され、教育されるものになった。第二次世界大戦前は科学技術=国力なので高等教育を中心に積極的に教育が推進されました。戦後はさらに初等教育からも科学的な問題を広く扱うようになり、最近は市民と一緒に色々な問題を考える双方向のものになってきています。」

環境問題や公害問題、近年では原発問題などを考えるときに専門家だけが議論して決めるのではなく、市民との対話の中から最善策をつくっていくということが当たり前になってきています。でも専門家との間には知識量の圧倒的な差があり、それを仲介する役割が必要になります。その仲介技術が科学コミュニケーションなのです。

「科学コミュニケーションは実際に学問として取り組まれていて、理論も構築されつつあります。でも今日はそういう難しい話ではなくて科学コミュニケーションに欠かせない”こたえる”、”つたえる””ひきだす”についてワークショップ形式で体験していきたいと思います。では楽しくやりましょう。」

大崎さんのまとめでいざワークショップスタートです。



■「こたえる」技術

最初のワークはこたえる技術です。このワークで私たちはいきなり年間2万人の来場者に接し、5000以上の質問に答えてきている科学コミュニケーターの皆さんの実力を目の当たりにすることになりました。

「質問をたくさん受けるというと数のことばかりが気になりますが、さらに重要なのは質問される方のダイバーシティ(多様性)の問題です。年齢、性別、国籍、教育レベルなどによって本当に様々な質問が投げかけられます。それに答えていかなければいけないんです。」

未来館は中近東や東欧、南米からのお客様も多く、それも幼児から高齢者まで幅にとんだ層の方が訪れます。教育レベルも未就学児からノーベル賞レベルの科学者まで様々。

早速こたえる技術についてのワーク1開始です。ワーク1は「全方向レシーブシート」をつくろうというもの。シートには年齢や人数が異なる8組(3歳児と母親、5歳女児、10歳小学生男子、中学生男子、大学生男子、若いカップル、企業に勤めている50歳男性、70歳女性)が描かれています。この人たちがしてきそうな質問を考え、答えるというものです。

まず参加者は3人一組のグループになり、質問者、回答者、記録者の役割分担を行います。質問者はそれぞれ8組がしそうな質問を考え、吹き出しに書き込みます。それを記録者に渡し、回答者に質問します。回答者は相手の年齢や人数に合わせて回答し、記録者はその内容を書きとめるというもの。これを役割を変えながら3回やります。

ワークが終わるとコミュニケーターの方から模範解答の発表です。例えば「カップル」の模範解答は以下のようになります。

カップル(女性)「わ~、このぬいぐるみかわいい~。触っていいですか?」
コミュニケーター「・・・・・。」(無言でうなづく、そして見守る)

これには会場も大爆笑。でも実体験に基づいた解答なのです。

「クリスマス時期になるとカップルが増えますが、その時期は男性のほうがたくさん喋って質問してきます。私たちは男性のプライドを傷つけないように持ち上げながら、一方で女性が飽きないように説明します。」

なるほど単に科学的知識を伝達するのではなく、質問者の状況や関係性を含めて受け止め、応対しているのです。

「一番科学コミュニケーションらしいやり取りが行えるのは大学生男子ですね。ピンポイントで聞いてきますし、相手も知識があるので短いやりとりで伝わります。コミュニケーションが経済的なんです。対極にあるのが70歳以上のおばあちゃん。孫の話や夫の話など身近なストーリーがほとんどで知識は要らないんです。孫のように温かく対応すると本当に喜んでくれます。」

コミュニケーターの皆さんは科学技術のことを伝えるのが仕事とはいえ、未来館に来場してくれていること自体、科学に興味をもってくれているということなので、関係ない質問にも丁寧に答えるようにしているそうです。なにかをきっかけに科学を意識してくれる機会が増えればという望みがそこにはあります。



■「つたえる」技術

次はつたえる技術です。

「説明をするときに、相手の反応がいまいちで伝わっているのかなと疑問を感じることってありますよね。私たちもお客様全員に完璧に伝わったなと思うことなんて無くて、どうやったら伝わるだろうといつも考えながら対応しています。」

落合さんのようなコミュニケーション研究に携わってきた方でもいまだつたえる技術を習得できていないという告白は会場の皆さんの心に響いたのではないでしょうか。

「なんで上手く伝わらないかというと話し言葉は書き言葉よりも曖昧で理路整然としていないんですね。何遍も同じことを繰り返したり、部分的な欠落が起きたり、想定していた結論に至らなかったり。あとは。いくつかの要素を並列してもどれが一番重要か伝わらないなんてこともあります。」

たしかに、このことを話そうと頭で考えていたことと、いざ話し終わったときの「話しきった」という感覚にはずれがあります。文章のようにきれいに主語があって無駄がない表現とは違います。

「でも、一方でアナウンサーのように話すのも個性が無くて、誰が話しても一緒ですよね。だから話し方教室に行って訓練するというのもなんか違う気がします。」

と問題提起と解説が行われたところでワーク2のスタートです。ワーク2は「全方位アタックシート」をつくろうというものです。これは自分の話し方の特徴を評価してもらい、そこからより効果的に伝えるために欠けているものを見つけ出そうというものです。

2人一組になりお互い持参した大好きなグッズについてプレゼンをします。話し手がプレゼンしている間、聞き手は質問せずに聞き、そこから得た印象をシートに記入します。「客観的なのか主観的なのか」、「論理的なのか叙情的なのか」、「制限時間より長く感じるのか短く感じるのか」そしてそれらを受けて「どれぐらい内容に共感できたか」というところがポイントになってきます。

ワークをはじめると意外に質問をしてはいけないはずの聞き手から質問が出て会話になりと和気あいあいとした雰囲気になりました。

ワークが終わったところで落合さんが「つたえる技術」のまとめに入ります。

「伝えるためには話し方、視点にオリジナリティがあるほうがいいんですね。だから綺麗に伝えようというよりは自分なりの言葉で話す。でも伝えなければいけない情報はあるわけですから、客観的な視点や論理的な構成を全く無視して良いわけではありません。こういう自分の話を客観的に評価してもらう機会があるとその特徴がわかる。今のは貴重な体験ですよ。」

なるほど、自分の個性は消さず、でも必要なことが伝わるようにバランスを意識するということですね。それは話している時間の感覚にもいえることです。楽しい話は短く感じ、長い話はつまらなく感じる。耳がいたいです。落合さんのまとめの中で一番印象に残ったのは次の部分です。

「伝えるときに大事なのは”相手にどんなお土産をもって帰ってもらいたいか”ということです。沢山の知識を持って帰ってもらいたいのか、一緒に来た人との楽しい雰囲気を持って帰ってもらいたいのか、科学への好奇心を持って帰ってもらいたいのかによって伝え方は変わります。答え方にも通じるところがありますがやはり相手あっての行為なんですね。」

「お土産を持って帰ってもらう」というフレーズが参加者の皆さんの心にすっと入ってきて、参加者の皆さんは熱心にメモを取られています。



■「ひきだす」技術

さて、最後のひきだす技術です。

「ひきだす技術ですが、最初は”まきこむ技術”としていたんですね。でも、まきこむというと相手が自発的にやる気になってくれるんじゃなくて、無理やりって感じがしてしまって、ひきだすに変えたんですよ。」

ワークに入る前、大崎さんが意図を伝えます。ひきだす技術というのはとても難しくて、一歩誤ると相手を無理にその気にさせる「詐欺の手法」になってしまいます。そんな難しさの中コミュニケーターの方が強調していたのは、あくまで主体は相手の側にあることです。

「“自分がそこに必要なんだと気づいてもらう”“自分でもできることなんだと気づいてもらう”ということが大事で、すべてを完璧にしてしまっては入りこむ余地がなくなっちゃうんですね。コミュニケーションの中で余地や余白を作ってあげるのがひきだすコツです。」

うーん。さらっと説明してくださるのですが実際やるのは難しそう・・・。ということで早速ワーク3のスタートです。

ワーク3は「全方位トス」ゲーム。「レシーブ」「アタック」ときて今度は「トス」。的確に相手が打てるように球を上げる技術ということでしょうか。

まず3人一組のグループに分かれて新しい会社を立ち上げる企画を考えます。考える時間は10分。発表は3分です。全グループの発表が終わった後に参加者が「自分が参加したい会社」に手持ちの2票を投票して勝敗を決めます。

時間も限られていることもあり、スタートと同時に活発な議論が始まります。それぞれが何が得意分野なのか、どんな企画なら他の参加者がのってくれるのか。初めて会ったとは思えないくらい笑いを交えながらの議論が行われました。

「じゃあ、我こそはというチーム、発表してください。」

大崎さんの声がけに手を挙げたのは女性3名のチーム。「㈱あなたのやりたい実現します」という会社についてそつないプレゼンが行われました。

「ありがとうございます。たぶん今のプレゼンでも普段会社や学校でやるのであれば、そんなに悪くないと思います。でも、今日はひきだすためのプレゼンなんですね。それを考えると普段とはちょっと違う視点が必要です。」

大崎さんが提示するスライドには、「一人だけが話す」「構成を最重視する」「一方的に話す」と書かれています。

「会社や学校で行われるプレゼンは、効率的に論理的に伝えることを重視します。それに対してひきだすプレゼンは真逆のことをするんですね。みんなで話し、相手に合わせて構成を変化させ、双方向で話す。」

この視点を受け3分間でプレゼンを再構成します。さて、その効果とは・・・?なんとすべてのチームが会話するように、ある意味漫才のようにメンバー内で会話しながら、時には会場に意見を求め、その答に対応して内容を変化させたプレゼンをするようになりました。どのチームの提案も面白そうだし、自分の身近にある雰囲気が出ています。この変化は周りから見ていても驚きでした。

最後に講師3名から示されたひきだす技術のまとめには

「チーム全員が、自分たちの身の丈の言葉で、強みや弱みをオープンにして、客観、主観のバランスを意識しながら、聞き手の目線に合わせて話す → 全員のあふれ出す情熱と責任感がポイント」

と書かれていました。まさに先ほどのプレゼンで参加者の皆さんが体験したプレゼンそのものであることがわかります。



■経済的なコミュニケーションの向こう側

今回のワークショップで印象に残ったのは、「いいね」と共感を生むコミュニケーションは企業や学校で求められる短時間に正確な情報伝達を行う効率的なコミュニケーションではないという点です。そのキーワードはこのワークショップの各所に現れました。

「個性を重視」「余地や余白を残す」「弱みもオープンに」「自分たちがまず楽しそうに」といったところは実際にワークショップを体験すると非常に納得がいくものでした。参加者の皆さんからも「ためになりました」、「コミュニケーション系のワークショップにしては異色だけど本音で話せていいです」という感想をいただきました。

このワークショップ、一回きりでお蔵入りさせてしまうのはもったいないねと講師の方々と話しています。またどこかでその場に合わせた形でお届けできればと考えています。

開催日時2013年9月6日(金) 19:00-21:00
会    場フューチャーワークスタジオ ”Sew”
開催場所東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニガーデンコート10F (東京メトロ赤坂見附駅D出口徒歩2分 永田町駅7番出口徒歩2分)
定    員19名
参 加 費1000円(材料費,実費代として)
主 催 者日本科学未来館/Sew運営委員会
概要 これなあに?
なににつかうの?
どんな仕組でうごいてるの?
宇宙の外側はどうなっているの?
時間がうまれる前はなにがあったの?
私たちこれからどうなるの?

日本科学未来館ではたらく科学コミュニケーターは
日々どんな人からのどんな質問にも答える
という仕事をしています。

ものづくり大国日本のお家芸ロボットから
地球と宇宙の神秘まで
なんでもこい!!

そんな仕事に必要なのはズバリ度胸!?
いえいえ、ちがうんです。

この驚異の技の名は科学コミュニケーション。

対話をとおして
問いを抱いた人にあったスコープとスケールを見つけ出し
ときに議論へと誘い出しつつ疑問を整理して
自分と世界をより深く考えるための新たな問いへと進む
未来シコウ法です。

遠い夏の日ふと心にうかんだ謎、最近気になって仕方ないこと
ありませんか?はたまたあなたの情熱の対象は?

科学コミュニケーションで料理すれば・・・それが未来の材料です。
詳細説明 18:30 開場
19:00 サイエンスコミュニケーターとして気をつけていることの話
19:20 ワークショップ01 「こたえる」
19:50 ワークショップ02 「つたえる」
20:20 ワークショップ03 「ひきだす」
21:00 終了 懇親会 (〜22:00)

日本科学未来館 大崎章弘さん 長谷川麻子さん 落合裕美さん

大崎章弘さん

1976年、高知県生まれ。
1999年早稲田大学理工学部機械工学科卒業。2001年同大学大学院修士課程修了。2005年同大学大学院博士後期課程満期退学後、同大助手を経て、2009年10月より日本科学未来館にて科学コミュニケーターとして勤務。


長谷川麻子さん

1977年、神奈川県生まれ。
1999年早稲田大学第一文学部ロシア文学科卒業。2000年~2001年モスクワ大学に留学。2002年同大学大学院修士課程修了。民間貿易会社、外務省勤務、通訳翻訳業を経て、2011年10月より日本科学未来館の科学コミュニケーターとして勤務。


落合裕美さん

1984年、神奈川県生まれ。
2007年慶應義塾大学環境情報学部卒業。大手化粧品会社を経て。2011年慶應義塾大学政策・メディア研究科修了。2011年10月より日本科学未来館の科学コミュニケーターとして勤務。

注意事項

ワークショップに使用しますので,ご自分の大好きなものを一つもってきて下さい.
本,CD,コップ何でも構いません.
自分の思いがこもった品であれば大丈夫です.

参加方法 本イベントは終了しました。

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