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Sew イベント 「やれば?」を「やろうよ!」に変える2時間

小さなコミットメント、身の丈コミュニティ

レポート

■コミュニティという言葉と向き合う

最近「コミュニティ」という言葉を見かける事が多くなりました。東日本大震災が起こった事や、少子高齢化社会で限界集落が増えてきている事などもその背景にあるでしょう。
でも、いざ真剣に「コミュニティ」という言葉を向き合ってみると、なんと訳すか、そして具体的に何の事か上手くいえなかったりします。一方ではわからないままに「コミュニティデザイン」といった心地よい言葉に憧れを抱く自分がいます。

今回の講師、菊池宏子さんは10年以上もアメリカでコミュニティ形成の仕事に携わってこられたいわばコミュニティの専門家です。だからこそ中途半端にその言葉が使われる事に不安を感じています。

ワークショップに向け、菊池さんと打ち合わせを重ねるうちに出てきたキーワードは「ダイバーシティ」そして「コミットメント」です。コミュニティは色々な人が居て、その存在を否定しない事から成り立つという事。そして、そこに居るからには自分の行動に責任を持ち、役割を果たす事。どちらもコミュニティが育ち、継続して行くためにはとても大事な事だといいます。

そしてもう一つ、これは日本人の特徴でもあるのですが、誰かに新しい提案をされたとき「いいね。やれば?」と賛同しながらも突き放すのではなく、肩を叩いて「いいね、やろうよ!」と一緒に挑む態度に変えるにはどうすれば良いか。そういうところも考えていかないとねという事になりました。


■コミュニティと聞いたときのイメージ

菊池さんがアイスブレイクとして提示したのは「コミュニティと聞いて何を思い浮かべますか?」という問いでした。一言で表すという条件もついています。

10分後皆さんの発表で挙げられたのは「責任」「絆」「よりどころ」というどれもキーワードになりそうで私たちが日頃接している言葉です。

菊池さんはまず、”Community”という単語の起源にさかのぼり、説明を始めます。ラテン語でたどれば”Communitas”が語源で”COM”とは「一緒に」、「供に」という意味、”MUNITAS”とは「贈り物」という意味だそうです。つまり、コミュニティの語源は「互いに贈り物を贈りあう」という事になります。また、英語で分解すると”Common”、”Unity”という意味が込められていて、「世界を共有する」という意味になります。

どちらの意味においても、菊池さんが重視するのは「相手が居る」ということです。そして「相手と共有する」というところ。まず、相手が居てこそ自分が居るんだという事に気付いてほしいと。そして相手は自分と違うんだという事を理解する。この違いをポジティブに捉える事で、自分ができる事、相手ができる事がわかるというのです。

「コミュニティは最初からあるわけではないのです。多様な人たちが居て、でも、それだけではコミュニティとは呼べないですよね。それで、私たち専門家がそこに居る人たちの間を取り持って、”エンゲージメント”と言いますが、結びつけてあげる事でコミュニティが出来てくる。そういう事なのですね。」

話はちょっと飛びますが、私たちのお腹の中には「酵素」と呼ばれる物質があります。あるものとあるものを反応させたり、分解したりして体に大事なものを生み出す役割を負っています。でも酵素自体は反応を促進するだけで変化しません。周りにあるものを引き合わせて、互いがその良さを発揮できる状態に持っていくのですが、あくまで自分は黒子で前に出て行かないのです。この働きと菊池さんが今まで取り組んでこられたスタンスがぴたっと重なる気がしました。コミュニティデザイナーはいわば集団において酵素の役割を果たすと言っていいのではないでしょうか。

「アメリカから帰ってきて、友人にこれからこういうことをやっていきたいという話をしたのですね。そうしたら、それはコミュニティデザイナーの仕事だと言われたのです。なるほど、そういう肩書にした方が伝わりやすいのか、という事でその時から名乗るようにしています。だから最初からコミュニティデザイナーになろうと思っていたわけではないのです。」


■メルティングポットとサラダボウル

「ほほう」と参加者の皆さんが頷いて聞いていると、菊池さんがあるスライドを提示しました。そこに描かれているのは煮込まれたソースの鍋とサラダです。

「コミュニティを考える時に陥りやすい誤解として、関係者全員を均質にするのがコミュニティを育てるのだと思ってしまう事があります。ノーマライゼーションとかジェントリフィケーションとかがこれに当たります。でも、それは違います。多様な人が多様なままに協力しながらつくりあげていくのがコミュニティなのです。全部が煮詰められて均質になってしまうソースではなく、サラダをイメージして下さい。」

なるほどわかりやすい。どうして異なる特徴を持った具材を結びつけるのか。ドレッシングを選んだり、切る大きさを変えたりと言う工夫をするのがコミュニティデザイナーというわけです。

「でも、コミュニティデザイナーに過分な期待をするのも違います。当然全力で支援はしますけど、結局は自走できないといけないし、参加者自身が自分たちのことを周りに説明できないといけないのです。」

そこで菊池さんはレーダチャートのような図を示します。真ん中に自分を置いて、それを同心円的に「チーム」「組織」「活動」「コミュニティ」と拡げて話す訓練をしようということです。相手を知るためには、自分の事もしっかり伝えられなければいけません。自分は誰で、身の回りには誰が居て、どんな組織に属しているか。そして携わっている活動においてなんの役割を果たしているか。さらにその活動の先につながっている人たちを含めてどんなコミュニティの中に居るか。これが伝えられてこそ相手との接点が作れるというのです。


■コンフォートゾーンから踏み出す

さて、ワークショップも佳境、今回、菊池さんと「一番大事だね」と打ち合わせしていた一歩を踏み出すためのワークです。

「人間は常に居心地の良い場所を求めています。そしてそこを見つけたら離れようとしません。何を言うにもその領域内にとどまって言うのですね。でも、それでは相手の立場を察したり、新しい力をつけたりなんて出来ませんよね。どうしても勇気を搾ってエイヤッと出て行く事が求められるのです。」

確かに、何となく生活が快適に送れていれば、それで満足だし、安定している事が何よりも良いのではという気持ちが働きます。日本人は、特にその傾向が強いと言われていてなかなか自ら冒険をしません。なにか足並みを揃えたり、様子をうかがったり、誰かが踏み出してくれるのを待つという経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。

「でもね、すっごく大きな冒険をする必要は無いと私は思っています。それよりも身の回りの問題を見逃さずに、それに対して自分は何が出来るのかを考える。そして実際に行動に移す事が大事なのです。ただ、問題と言っても自分の利益だけを考えて文句を付けるクレーマーじゃないですよ。地域や周りの人のためという意識を外してはいけません。」

熱を込めて、そして真剣に説明する菊池さんの話に参加者の皆さんは自然と背筋がピンとしています。そこでワークとして出されたのが「ゴールデンウイークに自分が起こす行動」でした。身の回りにある問題を解決するために、自分は何をするのか。ワークの発表を終えた菊池さんが強く訴えたとこがあります。

「行動を起こすと言った時に、それがコミュニティのため、そしてコミュニティを作るためになるにはひとつ条件があると思うんです。それは最初のワークで書いていた人も居ましたけど、「責任」なんですね。コミットメントには責任が含まれます。匿名でとか、影からいうのではなく、堂々とやらないといけないのです。でも、大きな責任を負う必要は無いんですよ。一人で負えないような事を解決するよりも、自分が責任もってアクションを起こせるよ、でも一緒にやらない?というくらいのことで良いのです。」

「コミュニティ」というと漠然としていて、カッコいい言葉ながらも自分に何が出来るのかわからなくなってしまいがちです。でも「身の丈」であれば一歩を踏み出しやすいというのがあります。互いの信頼感が醸成されることで、より大きな問題を背負えるようになる。それがコミュニティの醸成というわけです。

最後のスライドで菊池さんが満面の笑みで語りかけます。

「“Every Man Is an Artist.“ アーティストとは芸術家ということだけではなく、どんな人でも社会のために働けるということです。」

菊池さんと参加者の間の真剣なやり取りが行われた120分。

「今日はありがとうございました!」

という菊池さんの挨拶の後、拍手が鳴り止み、開場に響いたのは、

「ふーっ」

という声。ため息ではなく、やりきった、力づけられたという意気込みに似た音でした。


***当日使用した資料について************

当日使用したワークシート・発表資料については以下のリンクよりダウンロード可能です。

※商業目的の使用および無断改変はご遠慮ください。

■ワークシートのダウンロードはこちら

■発表資料のダウンロードはこちら


資料問い合わせ先 : Sew_Officelabo@okamura.co.jp

開催日時2014年4月18日(金) 19:00-21:00 (18:30開場)
会    場フューチャーワークスタジオ Sew
開催場所東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニガーデンコート10F 最寄駅:東京メトロ永田町駅、赤坂見附駅
定    員15名
参 加 費1000円(講師料,懇親会費として)
主 催 者米国・日本クリエィティブ・エコロジー/Sew運営委員会
概要 コミュニティという言葉から、あなたはどんなことを思いますか?

コミュニティを考える上で大切な事は「互いの違いを尊重し、コミュニティという仕組みを形成すること」。「違いがあるから美しい」という考えが、豊かなコミュニティ(地域にかぎらず、どんなシチュエーション・仕事環境も)を育んでいきます。そこには、Diversityー多様性の意味をきちんと理解する必要があり、このワークショップでは、「コミュニティとは本来どんな意味なのか?を整理し、多様なコミュニティ形成への携わり方などを考えます。

出来る限りコミュニティと関わりたい、アメリカ流コミュニティデザインに興味があるかた、是非ともご参加お待ちしております。
詳細説明 18;30 開場
19:00 はじめに 趣旨説明
19:10 レクチャー&事例紹介
19:45 ワークショップのテーマ出題・説明
20:00 グループディスカッション
20:30 発表

21:00 懇親会
22:00 解散

菊池宏子さん

アーティスト/コミュニティデザイナー
米国・日本クリエィティブ・エコロジー代表

1972年生まれ。東京出身。

1990年、高校卒業後渡米。ボストン大学芸術学部彫刻科卒、米国タフツ大学大学院博士前期課程修了(芸術学修士)後、マサチューセッツ工科大学・リストビジュアルアーツセンター初年度教育主任、エデュケーション・アウトリーチオフィサーやボストン美術館プログラムマネジャーなどを歴任。美術館や文化施設、まちづくりNPOにて、エデュケーション・プログラム、ワークショップ開発、リーダーシップ育成、コミュニティエンゲージメント戦略・開発、アートや文化の役割・機能を生かした地域再生事業や地域密着型の「人中心型・コミュニティづくり」などに多数携わる。2011年帰国。「あいちトリエンナーレ2013」公式コミュニティデザイナーなどを務める。現在は、東京を拠点に、ワークショップやプロジェクト開発の経験を生かし、クリエイティブ性を生かした「人中心型コミュニティづくり」のアウトプットデザインとマネージメント活動に取り組んでいる。立教大学コミュニティ福祉学部兼任講師、NPO法人アーツ&ソサエティ研究センター理事なども務めている。

注意事項

遅刻、欠席がないようお願いします。

参加方法 <定員に達しましたので、締切らせていただきました>2014.04.17


キャンセル待ちをメールにて受け付けております。
以下の事項をメールでお送り下さい。
当日午前までに参加可否をお知らせいたします。

 ・お名前:
 ・連絡用メールアドレス:(複数可)
 ・連絡用電話番号:
 ・ご年齢:
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 ・お仕事・専攻など:(差し支えのない範囲で結構です)
 ・お申込みの動機:(必須、ただし選考用途ではありません)

 送付先 : Sew_Officelabo@okamura.co.jp

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