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Sew イベント

本の重心、僕らの関心

レポート

関係性が本をつくる
読めないくらい書き込まれた黒板、時間をオーバーしてもとまらないプレゼンテーション。でも誰も文句を言いません。食い入るように眺め、身を乗り出して話を聴いています。

本を介してつながりあうイベント『本の重心、僕らの関心』の会場はそんな一体感と熱気に溢れていました。

“本はそれだけでは紙の束です。読む人、薦める人、話題にする人など本に関わる人がいるからこそ、いきいきと魅力的なものに変わります。人と関わりを持った本は、そこに1冊しかない本なのです。”

これは主催者の川上さんがこのイベントの告知用に書かれた文章です。
まさに参加者の皆さんがSewに持ち寄った本はこのイベントを介してまた新たな経験が埋め込まれ、また違った「そこに1冊しかない本」になったのではないでしょうか。




本と本をつなぐ

このワークショップで行う作業はとてもシンプルです。まず3人1組のチームに別れ黒板を囲んで座りお互いが持ち寄った大事な本を紹介しあいます。
なぜ大事な存在になったのか、本との体験を他の2人に伝える作業。個人的な濃い経験を語るというのは実はとても恥ずかしく感じられますし、それが決して楽しい思い出とは限らないので時としては辛いこともあるかもしれません。
しかし、そんな心配は杞憂に過ぎないことがすぐにわかりました。そこかしこで笑い声がおこり、初めて会った人同士とは思えないようなコミュニケーションが展開されたからです。

「お互いの本を紹介し終わったら、それぞれの本の共通点となるキーワードを出してみてください。もっと言ってしまえば共通のキーワードから新しい本が現れてくると面白いですよね。」

川上さんはそう言いながら各テーブルの間を行ったり来たりして様子を伺っています。
ただ自分の話をするだけの発散モードに陥っていないか。かけ離れた本同士で共通点が見つけられない迷走モードなっていないか。各チームの参加者に声をかけながらアドバイスをおくります。




関わり過ぎない親のような目線

このワークショップのプログラムを作っていくとき、どんな小さな疑問でも川上さんは答えが出るまで考えて前に進んでいく姿勢を貫いていました。
例えば、ワークショップのルールを決めようとしていたとき、当初は本の間をつなぐ時に出てきたキーワード、間に現れた本それぞれに点数を設定してもっとゲームっぽい構成にしようとしていました。「それぞれ何点に設定すれば勝ち負けが出てくるのか。」「どんなインセンティブだと参加者が面白がって取り組めるのか。」色々なことを議論したのですが、ふと川上さんが沈黙したあと

「原点に帰りましょうか。そもそも、参加者の人たちはなにを持って帰りたいんでしょう。」

とつぶやきました。
よく考えてみれば、参加者の皆さんが持ち帰りたいのは本にこめられた色々な人の経験であり、それを介してつながりあえたという経験であって、勝ち負けの経験でも、ゲームをしたという経験でもありません。
主催者側からすれば盛り上がる、面白くするということでゲーム性を持たせた方がいいように感じられますが、時としてそれは単なるエゴになるかもしれないということに気付かされました。結果、点数は付けず、勝ち負けもなくすことになったのです。

ワークショップに対する川上さんの目線はまさに父親のそれだといえます。
あるときは必要以上に負荷がかからないようヒントや手助けの方法を考える。
一方、じっくり悩んだ方が良い、自分たちで答えを見つけ出した方が良いときにはわざと突き放して見守る。そうした関わり方の緩急をいつも意識しながらプログラムはつくりあげられていったのです。




器としての本、糸としての本

「うーん。これは面白いですね。」
「なるほどなるほど、そこでつながりますか。」
「これはかなりまとめてきましたね。」
川上さんが各チームのプレゼンを聴きながら適宜間に挟むコメントからは想像もつかないつながりが生まれたことに驚く言葉が次々に出てきます。
分野も年代も違う初めて会う人。持ち寄った本も千差万別。一見「この本同士はまったく関係ないのでは」と思ってしまうような本であっても、そこにこめられた経験を紐解いていくと思わぬところで共通点が見えてきます。
「誰に贈られたか」「いつ読んだのか」「誰に読んで欲しいか」・・・本の内容というよりは本を介して自分自身を伝えていくからでしょうか。

参加者の皆さんのやり取りやプレゼンテーションを聞いていて気付いたのは、本がもつ器としての懐の深さです。本があることによって初めて会った相手でもかなり濃い話を途切れることなく届けることができます。本は小さく、薄いですがその中にここまでたくさんの経験を蓄えておくことができるのかと正直驚きました。

また、本のもつ人をつなぐ力にも驚きました。今まで興味を持たなかった分野の本でも、他の人が熱く経験をもとに紹介するのを聞くとすぐにでも読んでみたくなります。
さらに紹介されて読んだ後、紹介してくれた人と感想を共有したいという気持ちになって、まるで糸のように本が人と人をつないでいくようです。21人がそれぞれ1冊本を持ち寄ったので、まず出発点として21冊の大事な本があつまり、そこから共通のキーワードをもとに探り当てられた本は50冊以上。
あわせて70冊の熱い本たちが会場に現れました。




自分達が「いる」本棚

今後、Sewでは持ち寄っていただいた本21冊のうち、手に入れることができる本を実際に購入して本棚を作る予定です。参加者はもちろんのこと、この本棚を見てみたいという方がいらっしゃいましたらSewを訪れてみてください。

さらにそれぞれのチームで新たに登場した本もリスト化し紹介します。
この本棚は世界に2つと無い参加者の皆さんがそこにいる本棚です。

「また、このイベントやりませんか。」

多くの参加者の方がこの言葉を口にされていました。そうですね。私たちスタッフも年毎にこのイベントをおこなってSewにいくつもの特別な本棚が増えていくようにできたら素敵だなと思っています。





【当日会場に持ち寄られた本、現れた本】 *書名をクリックするとamazonの書籍紹介ページが開きます。


◆Aチーム

・持ち寄った本
今野敏『慎治』
三島由紀夫『金閣寺』
野矢茂樹『はじめて考えるときのように―「わかる」ための哲学的道案内』

・現れた本
星新一『星新一 ショートショート1001』
アラン・パーカー『シド・ヴィシャス ノー・ワン・イズ・イノセント』
宗田 理『ぼくらの7日間戦争』
G.K. チェスタトン『求む、有能でないひと』



◆Bチーム

・持ち寄った本
大岡信『空の青さをみつめていると』
谷山雅計『広告コピーってこう書くんだ!読本』
伊藤計劃『ハーモニー』

・現れた本
谷川俊太郎『あさ/朝(朝のリレー)』
西村佳哲『かかわり方のまなび方』
レイン『自己と他者』
ナガオカケンメイ『ナガオカケンメイのやりかた』
円城塔『後藤さんのこと』



◆Cチーム

・持ち寄った本
司馬遼太郎『項羽と劉邦』
奥山清行『人生を決めた15分 創造の1/10000』
山本美香『ぼくの村は戦場だった。』

・現れた本
かわぐちかいじ『沈黙の艦隊』
黒井勇人『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』
山崎豊子『沈まぬ太陽』
フアン・カルロス・クベイロ『グアルディオラのサッカー哲学』



◆Dチーム

・持ち寄った本
大宮エリー『生きるコント』
田口八重『おこしやす―京都の老舗旅館「柊家」で仲居六十年』
バージニア・リー・バートン『ちいさいおうち』

・現れた本
J・K・ローリング『ハリー・ポッターと賢者の石』
なかがわりえこ『ぐりとぐら』
松尾健史 『I met a boy.父の日に、バンビ公園で。』
三浦しをん『風が強く吹いている』
南ひろこ『ひなちゃんの日常』
中村光『聖おにいさん』
東野圭吾『聖女の救済』
美内すずえ『ガラスの仮面』
ジーン・ウェブスター『あしながおじさん』
佐藤 多佳子『一瞬の風になれ』
村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
ポール・ギャリコ『猫語の教科書』
山崎亮『コミュニティデザイン―人がつながるしくみをつくる』



◆Eチーム

・持ち寄った本
寺山修司『寺山修司名言集―身捨つるほどの祖国はありや』
クリーヴ・バクスター『植物は気づいている―バクスター氏の不思議な実験』
本多孝好『MOMENT』

・現れた本
E・H・シャイン『プロセス・コンサルテーション―援助関係を築くこと』
G・バタイユ『エロティシズム』
新谷弘実『病気にならない生き方 -ミラクル・エンザイムが寿命を決める-』



◆Fチーム

・持ち寄った本
佐々木雅幸『創造都市への展望』
湯本香樹実『夏の庭』
萩原規子『空色勾玉』

・現れた本
貴志祐介『悪の経典』
アーネスト・T・シートン『シートン動物記』
石田衣良『約束』
宮部みゆき『ステップファザー・ステップ』
宮部みゆき『今夜は眠れない』
伊坂幸太郎『チルドレン』
伊坂幸太郎『魔王』
伊坂幸太郎『死神の精度』
伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』
V・ユゴー『レ・ミゼラブル』
金城一紀『GO』
J・K・ローリング『ハリー・ポッターと賢者の石』
J・R・R・トールキン『指輪物語』
三浦しをん『風が強く吹いている』



◆Gチーム

・持ち寄った本
角田光代『愛してるなんていうわけないだろ』
上林暁 (著), 山本善行 (監修) 『上林暁傑作小説集-星を撒いた街』
ナタリア・ギンズブルグ『ある家族の会話』

・現れた本
ヘッセ『郷愁』
G・ガルシア=マルケス『百年の孤独』
ボフミル・フラバル『わたしは英国王に給仕した』
ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』
J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』
ポール・オースター『リヴァイアサン』

開催日時2012年9月19日(水) 19:00~21:00(18:30開場)
会    場フューチャーワークスタジオ ”Sew”
開催場所〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニガーデンコート10F
定    員20名
参 加 費1000円(飲みもの、軽食代として)
主 催 者Sew運営委員会/ブックピックオーケストラ
概要 誰にでも大好きな本、人生の節目に読んだ本、大事な人に薦められた本があります。

本はそれだけでは紙の束です。読む人、薦める人、話題にする人など本に関わる人がいるからこそ、いきいきと魅力的なものに変わります。人と関わりを持った本は、そこに1冊しかない本なのです。

大事な本を持ち寄って、その本をどんな場所でどんなふうに出会い、どう読んだかなど、お互いの経験から語り合うと、持ち寄った本の中間に2人に共通した本や事柄がたちあらわれてきます。そして、さらにそこで出てきた本を眺めたほかの人から、また新たな経験と本が・・・。

1冊の本を持ち寄り、みなさんが関わることによって、既存のカテゴリや分野を超えた、活きた本と僕らの関心の輪が広がっていきます。その過程を楽しみながら、活きた本の関心マップを作るのが『本の重心、僕らの関心』です。本が大好きな方、本を人に薦めたい方、本には詳しくないけどこれから読んでみたいという方・・・どんな方でも本に興味があれば参加大歓迎です。


<ワークショップの内容>

参加者は3名1組のグループに分かれ、お互い持ち寄った大事な本に関する体験を語り合います。「どんな時に」「どんな場所で」「誰と」・・・互いの話の中からつながりあえる部分、共通する部分を見つけ出し、それをテーマやキーワードとした本を探します。

3人で行うと自分と他の2人の間に2冊、そして他の2人の間に1冊の合計3冊が新たにその場に現れます。

新たな3冊が出た時点でグループでの作業はいったん中止。今度は参加者全員でお茶を飲みながら各グループで持ち寄った本、新たに出た本を共有します。この時点で各グループは6冊の小さな本棚を作ったことになり、その本棚の魅力を周りの人と共有するのです。

こうした体験の中で持ち寄った本たちの「重心」はどこにあるのか、僕らの「関心」はどこにあるのかを感じ取り、共有できればと考えています。

詳細説明 【タームテーブル】
18:30 開場
19:00 スタート
21:00 ワークショップをふりかえるパーティー
22:00 終了

book pick orchestra 代表 川上洋平さん

本のある生活をふやすために、人と本が出会う素敵な偶然を演出するために、さまざまな場所で今までなかった本のあり方を模索するブックピックオーケストラ代表。益子STARNET、渋谷SUNDAY ISSUE、新宿HAPONをはじめとする各地での古書のセレクト販売や、テーマに合わせた企画での各地のイベント出店、オリジナル商品文庫本葉書の全国の店舗での販売など、様々な場所で独自の本の展示、販売スタイルを展開している。
http://www.bookpickorchestra.com

注意事項

「大好きな本」「大事な人に薦めたい本」を1冊ご持参ください。
また、ご自分の本棚の写真を撮ってご参加いただけるとより楽しめるかと思います。

参加方法 本イベントは終了しました。

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