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Sew イベント スマートフォンの思い出から紡ぎだす、アナログ写真の魅力

写 真 を 編 む 夜

レポート

■写真集と写真展

「写真は絵画のようにドンと一枚で見せることもできますが、何枚かを組み合わせて楽しむことに向いている芸術だと思います。」

講師の調さんの『写真を編むこと』というレクチャ。まずは写真の特徴をおさらいするところからスタートです。

「連続した写真の見せ方のなかで、みなさんが良く体験するものとして、写真展と写真集があります。」

調さんによれば、写真展は基本横方向に移動しながら鑑賞することを前提に構成されているそうです。壁全体としてどう見せるか、次の壁に移るときにどのような印象を与えるか、壁をひとつの単位として写真を編んでいきます。

一方、写真集は写真展とは異なった手法で構成されているそうです。

「みなさん良く勘違いされるのですが、写真展と写真集は写真家にとって全く違うものなんです。写真展は実空間の壁に複数枚の写真を並べて観てもらう。一方、写真集は本なので、見開きの2枚、そしてページをめくった時にどんな変化を与えるのかというところに神経を集中させて構成します。そして本なので、起承転結というか全体を通してのストーリー性も意識されていて、読み終わった時になんらかのメッセージが残るようになっています。」

他にも一枚ずつの写真を時間をかけてつないでいくスライドショーはより映像的、映画的な構成を意識し、ブログやSNSで写真を公開するときには縦スクロールを意識して写真展とは異なる構成をしているそうです。


■写真集の構成技法

今回のイベントはスマートフォンに撮りためた写真をInstant Labを使ってインスタント写真として現像し、他の参加者の写真と組み合わせる(編む)ことで物語をつくろう、体験を共有しようということがテーマになっています。

「いきなり写真を編めといわれても、プロのキュレーターではないので難しいですよね。そこで私が多くの写真集をみてきて、だいたいこんな構成法があるのではと思った代表的な4つのタイプを紹介して、それを参考に編んでみたらどうかなと思います。」

写真研究家として写真分析をしている調さん。つねに膨大な写真を見つめ、写真集を手に取り、写真展に足を運んでいます。その経験から見つけ出された分類ということでみなさんメモをとる準備をして聴き入ります。

「フラッシュ型(註:ポーカーの手役のひとつで、5枚全てが同じマークで揃っている)。これは写真家がもつ圧倒的に際立ったスタイル、色彩や撮影手法、撮影対象で揃えて、同じ強度で押し切るタイプですね。例えば蜷川実花さんの写真集はこれにあたるといえます。蜷川カラーと呼ばれる極彩色で強烈に世界に引き込んでいって、最後まで息切れすることがありません。物語を見せるというより、世界を体験させる感じですね。」

具体的に写真家の名前を挙げ、調さん自ら持参した写真集を回覧して体験してもらいます。

「次はコレクション型。これもフラッシュ型と同じで写真そのものの強度は写真集をとおして変化しません。ただ、画一的な状況下で対象を撮り続け、膨大な量並列することで対象の“典型”を浮き上がらせることに徹しています。例えばドイツの写真家、ベッヒャー夫妻は給水塔を曇りの日に決まった距離から撮影することでフォルムの違いを明確にし、“典型”をあぶり出そうとしました。」

一枚見ただけでは、ただの給水塔を撮ったモノクロ写真なのですが、ページをめくるごとにどこか違うほかの給水塔があらわれ、いつの間にかどれを観ていたのかわからなくなっていきます。しかし、写真集を閉じてみると「給水塔」というイメージは心に濃く残っています。

「次はシークエンス型。このタイプの代表的な作家としてドウェイン・マイケルズというアメリカの写真家がいます。前から人が歩いてきて、すれ違う。そのほんの一瞬を複数枚の写真で構成します。息をのむというか、普段あまり意識しない出来事に多くの意味を感じさせる技法だといえます。」

調さんによると、シークエンス型の手法で表現されるシーンは映像で表現することも可能だそうですが、ベタっと連続して見せるより、印象深いカット数点で細かく刻み、あいだの時間を落としたほうが、見る側の想像力をかきたてて効果的だそうです。

「最後にストーリー型。これはシークエンス型と似ていますが、もっと長期間を対象としていて一冊で一つの物語になっています。基本時系列に沿って写真が配置されていて、その中に突如関係のない写真が挟み込まれるなど映画、映像の手法に似たところがあります。代表的な作家として荒木経惟さんの『センチメンタルな旅』が挙げられると思います。この写真集は自身の新婚旅行を時系列に追っているのですが、風景写真、他人の写真などが合間合間に突然入ってきたりする。でも、それらはちゃんと考えられて挿入されていて、荒木さんの生涯のテーマである“生と死”を暗に感じさせるようになっています。」


■インスタント写真に込められた想い

続いてBccの橋詰さんからImpossibleプロジェクトの起こりとInstant Lab開発の経緯についてレクチャがありました。

「2008年、ポラロイド社がインスタントフィルムの製造中止を発表した時、のちにIMPOSSIBLE創設者となるフロリアン・キャプスという発明家が立ち上がり、ポラロイド社に何度も掛け合い資金をかき集め、唯一残っていたオランダの工場とインスタントフィルムの製造権を受け継ぎました。周囲から”フィルムの再生産は不可能だ”と言われ続けたその言葉を、彼は可能にできるという信念を込めて社名に "IMPOSSIBLE(=可能)” と名付けました。この活動は次第に世界的な広がりをうみ、IMPOSSIBLE社は日々研究を重ね、独自のフィルムやカメラの開発をおこなっています。」

Sewの黒板には製造を始めたときのフィルムから最新のものまで、試行錯誤を重ねてきた結果がわかるようにとたくさんの写真が並びました。

「インスタントフィルムの魅力はなんといっても、そのコミュニケーション能力にあると思うんです。例えばこのカメラ(SX-70)をもって写真を撮らせてくださいというと、たいていの人がOKしてくれるんです。カメラがかわいいということもありますが、インスタント写真は一点ものなので悪用されることがないという安心感があるのでしょう。あとは、撮った写真をその人に贈れるんですね。モデルになってもらったので、初めの一枚を相手にプレゼントして、もう一枚撮らせてもらって私が記念に持ち帰る。撮っている間に会話するのでなんか友達になった気分になります。」

カメラや写真を特別なものにして、境界をつくるのではなく、人とつながるためのツールとして敷居を下げていく、それが橋詰さんがインスタントフィルム、カメラを通して行っている活動だそうです。

「あとはこのフィルム、一つに8枚しか入っていないし、それなりの値段もするので写真を無駄に撮らなくなります。常にアンテナをはって、本当に自分のココロが動いた時に撮る。デジタルだとたくさん撮っておいて後から選べばいいやという風になるのでそこがちょっと違うかなぁ。」

橋詰さんが私物のカメラを腰の位置に抱え、アナログ写真の魅力について語ると、会場の参加者のみなさんも相槌を打ちながらひきこまれていきます。

「とはいってもスマフォ、便利ですよね。思いついてすぐ撮れるし、最近は結構きれいに撮れる。私は“デジタルがダメ!“と言っているのではなくて、スマフォで撮った写真も手に取ってコミュニケーションできたらいいなぁと思っています。そんな思いをかなえるために生まれたのがInstant Labなんです。」


■偶然の出会いから見つかる奇跡

「この写真は朝日、それも初日の出を撮ったものなので、全くいっしょの時に違う場所で撮ったってことですね。」

実際にまわりの参加者の方の写真を加えて編んだ写真たちを共有する時間。全然違う意図でピックアップされたのにもかかわらず、撮影した人に聴くと思わぬ共通点が浮かび上がります。前述の発言は「朝日と夕日」という組み合わせで選ばれた写真が、どちらも今年の元旦に撮られたものと分かった時のやりとりです。

「色彩だけでみると、同じ人が撮ったのかなと思う写真も、実は別々の人が撮影したものだったり。シャッターを切るタイミングというか、心が動く対象が同じだった証拠ですね。」

「この構成はストーリー型かな。起承転結があるし、時間の流れを意識していますね。」

「これはフラッシュ型ですね。鮮やかな色彩の写真で一見対象がなんなのかわからない抽象的な写真を並べている。それが一体何なのか、相手に考えさせる余地をつくっています。」

「ここにもう一枚なにか挟むことで印象が変わる気がするなぁ。」

参加者と撮影者のやり取りの合間に調さんと橋詰さんがコメントしていきます。写真という名前から「
真実を写す」ためにあると考えられがちですが、撮影者と鑑賞者によって全く違った解釈ができ、さらに双方を聴いた人が新たな解釈を加える。真実とは「ありのままに」ということだけでなく、「見た人の素直なココロの動きを含めて」ということなのかもしれません。

アナログ写真をとおして経験を共有する「写真を編む夜」。調さん、橋詰さんがおっしゃっていた「写真はコミュニケーションツール」という言葉を参加者全員が体験できる貴重な機会となったのではないでしょうか。

開催日時2016年4月15日(金) 19:00-21:00
会    場フューチャーワークスタジオ”Sew”
開催場所東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニガーデンコート10階
参 加 費1000円(材料費として)
主 催 者調 文明/ Sew運営委員会 協力:株式会社Bcc
概要 デジタルとインターネットの組み合わせによって、写真はより一層カジュアルなものになりました。
TwitterやInstagram、FacebookといったSNSに写真をアップすることは、私たちの生活の一部になっていますよね。facebookだけでも、2015年の一日平均で3.5億枚の写真がアップロードされているそうです。「いいね!」や「リツイート」をし合う「シェア(共有)」文化も、日常の一コマになりつつあります。

でも、ちょっと待ってください。
「いいね!」をした写真は、時の経過と共に、一瞬にしてタイムラインのかなたに流されていってしまいます。それは自分の撮った写真も同様で、大半の写真は見返されることなく、データの山に埋もれています。それはちょっと残念な気がします。

実は写真には、見る時見る人によってまったく違った印象を与える側面があります。あの時は「いいね!」じゃなかった写真が、今この時はかけがえのないものに見えてくる。あるいは、あなたにとって傷心旅行先の重苦しい風景写真が、別の人の目には長らく帰っていなかった故郷の思い出深い風景写真に見えることもあるかもしれません。

そして、写真は一枚だけじゃなく二枚、三枚と連ねることで、とても豊かな物語を奏でることもあります。「写真集」はそうした写真の良さをぎゅっと凝縮した形態なのかもしれません。一枚でも楽しめて、複数枚でも楽しめる。だからこそ、写真はおもしろいのかも。

こうした「おもしろさ」を、デジタル上で体感するのは難しいと考えた私たちは、BCC社の協力のもと、データ上の写真を手に取ることのできる形あるものに変換し、自分の写真を他の人はどう解釈するのか、個から全になることによって解釈はどう変化するのかなど、オンラインでは伝わらないアナログな楽しさを体験していただく場を設けました。流れたり埋まったりする、データの状態では忘れがちな写真の「おもしろさ」を、このオフ会で存分に味わってみましょう!


■THE INSTANT LAB(インスタントラブ)とは

スマフォに保存された写真データなら、どれでも簡単にインスタントフィルムに焼き付けることができる、IMPOSSIBLE社が開発した世界初のデバイスです。スマフォの画面の明かりだけで露光させ、化学製品で処理し現像させる仕組みとなっており、画面上でしか楽しむことのできなかった写真を、簡単に手で触れることのできる本物の写真に生まれ変わらせます。INSTANT LABはiPhoneに保存されている写真データを本物のインスタントフィルム写真に生まれ変わらせることができる、まさに「アナログとデジタルの融合」なのです。
詳細説明 18:30 開場
19:00 挨拶、注意事項伝達
19:10 レクチャ「写真を編むことについて」
19:25 レクチャ「ポラロイドの価値、デジタルとアナログ」
19:40 ワークショップ01「写真を選ぶ」
19:50 ワークショップ02「組み合わせる」「解釈する」
20:15 発表・共有
20:50 ラップアップ
21:00 懇親会(22:00終了)

調 文明さん

しらべ ぶんめい

写真研究者/写真批評家

1980年、東京生まれ。
日本女子大学ほか非常勤講師。『アサヒカメラ』『日本カメラ』『写真画報』『PHaT PHOTO』などで執筆中。論文に「A・L・コバーンの写真における都市表現――三つのニューヨーク・シリーズを中心に――」(『美学芸術学研究』東京大学美学芸術学研究室、2013年)、「御真影と『うつし』」(展覧会カタログ『かげうつし――写映・遷移・伝染――』京都市立芸術大学@KCUA、2013年)、「ジェフ・ウォール――閾を駆るピクトグラファー」(『写真空間4』、青弓社、2010年)など。


■協力企業

株式会社Bcc
http://www.bcc-tokyo.jp/
https://www.the-impossible-project.jp/index.php

2008年よりウィーンを拠点にスタートしたIMPOSSIBLEの第三拠点IMPOSSIBLE TOKYOを仕切るプロジェクトチーム。これまでに多種多彩なアーティストのコラボレーションを行い、写真展やイベントを開催。製造が終了となったポラロイドフォーマットのインスタントフィルムを再生産し、その表現重視のアナログインテグラルフィルムが持つ可能性を日々研究・発表。デジタル時代に逆流し、現実世界に生きる写真を残すため昼夜問わず活動中。

注意事項

*1 ワークショップでは、ご持参いただいたスマートフォンからアナログ写真を現像します。現像にはImpossible Project Appを事前にインストールする必要があります。インストール可能か確認してください。アプリは無料です。

*2 過去に撮影されたデータをもとに現像を行います。事前に現像したいデータのあたりをつけておいていただくと当日の作業がスムースに行えます。現像し、編集したフィルムはお持ち帰りいただけます。

参加方法 このイベントは終了しました。

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